カバー工法の費用は適正価格か?
当サイトでは、以前からメインサイトを中心に見積書のチェックサービスというものを行っています。
これはボッタクリ被害に合うお客様を少しでも減らす事ができればという目的で行っているものです。
相場価格の範囲内で出されたものについては「安心してご依頼頂いて大丈夫です」とお伝えしているのですが、今回はそうではありませんでした。
今回の相談内容は、築19年、屋根材はコロニアルで寄棟屋根。
「ガルバリウム鋼板でのカバー工法を勧められているが見積内容に不安があるので専門家の意見を聞きたい」という内容でした。
直接お電話頂いたので詳しくお伺いできたのですが、その内容は
品名 | 数量 | 単価 | 金額 |
ガルバリウム鋼板(ヒランビー) | 78㎡ | 9,000 | 702,000 |
ルーフィング | 78㎡ | 2,700 | 210,600 |
断熱材 | 78㎡ | 2,500 | 195,000 |
人工代 | 11人 | 20,000 | 220,000 |
工事合計金額 | 1,327,600 |
これを見た感想は。
①ヒランビーの単価が高め。
②ガルバリウム本体の単価は書かれているが、役物(部材)が書かれていない。
③ルーフィングも高め。
④断熱材の費用も高い。
⑤なぜ人工代が別途に書かれているのか?
それぞれの項目で感じた疑問点。
①②屋根本体と役物について。
ガルバリウム本体の単価は書かれているが、なぜ役物(部材)の項目が無いのか?
屋根工事では、屋根本体以外にも軒先唐草・ケラバ・捨て板・棟包み・谷樋などの役物が必要で、役物をどの程度使うかによって費用は変わるものです。
その役物が何も書かれていないということは、役物も含んでの本体単価になっているのか?
必要な役物を使わない、いわゆる手抜き工事なのか?
を判断することができません。
役物を全く使わずに工事することは不可能なので、本体に含まれていると考えるしかありませんが、どちらにしても、いい加減で不親切な書き方でもあります。
④断熱材について。
この屋根材は裏面に断熱材が付いていないタイプなので、断熱材の追加費用として2,500円/㎡と書かれていますが、単価が高く設定されています。
2,500円上乗せになるなら、初めから断熱材と一体化したタイプのガルバリウム鋼板屋根にした方が安上がりなのですが、恐らくこの業者はヒランビー以外の屋根材を工事した経験が無いのかもしれないと想像されます。
⑤人工代について。
人工代が別途書かれていたたことも屋根専門の業者ではないかもしれないと推測されました。
屋根の見積書では、それぞれの項目に工事費込みの単価を記載するのが通常です。
屋根本体のヒランビーの項目には工賃込みの単価として7,000円と記載するのが一般的で、人工代として別途記載することは殆どありません。
このように人工代を別途に書いてある場合は、お客様が7,000円と記載された単価が高いか安いか?を判断する事が分かっており、比較する事を考えて記載している場合があります。
それぞれの項目が高めに設定されていましたので、屋根本体に人工代を加えて計算してみると。
屋根本体単価702,000+人工代220,000円=922,000
になります。
この金額に、必要になるであろう役物代が入っていると仮定しても、相場より20万円近く高い感じでした。
お客様へお伝えした事は。
費用が高めであること。
見積書の書き方から見て屋根の専門業者であるかどうかが分からないのと、客を欺くような書き方もしている。
役物の種類や数量が書かれておらず、どんな工事をされるか分からない。
お客様も見積内容に不安を感じていらっしゃいましたので、他の業者にも見てもらうようお伝えさせて頂いたのでした。
突然の工事依頼
あれから、7か月後
こちらのお客様からご依頼がありました。
隣家の工事を見て
実は、こちらのお客様にカバー工法を提案した業者は隣家にも声を掛けており工事が完了していました。
隣家の工事は、↓コチラ
お客様に提案した屋根材と同じヒランビーで施工されていましたが、やはり基本的な工事方法も知らない素人工事でメチャクチャでした。
1枚目の写真:棟包みを固定するには、側面から内部にある木材にステンレススクリュー釘またはビスを打つ必要がありますが、この工事は側面ではなく屋根材本体に上から脳天打ちて固定されていました。
これは確実に雨漏りするだけでなく、屋根寿命を大幅に短くする原因です。
また棟包みは本体下部に合わせ適切な位置でカットされておらず適当です。
2枚目の写真:裏側に谷がある曲がり棟部分ですが、降り棟から平棟へと移行する棟包みが適切な位置でカット接続されていません。
この写真では分かりずらくなっていますが、適切な接続工事がされていないため隙間が空いてしまいましたが、その部分に端材を入れてごまかし工事がされています。
3枚目の写真:平棟から降り棟へと続く三つ又部分ですが、全てきちんと接続されておらずコーキングを塗ってごまかしています。
平棟部分も真っすぐ接続されておらず、やはりコーキングでごまかしていますが、コーキングが劣化した途端に雨漏りが始まる可能性が高いです。
屋根カバー工法から葺き替えに変更
お客様は「あと30年くらい屋根を持たせたい」とのご希望でしたので、今後起こる可能性がある地震対策として屋根が重くなるカバー工法ではなく、屋根を葺き替えることになりました。
コロニアルを全て撤去して構造用合板を増し張り。
強度を考え構造用合板は全てネジ止めしました。
新しい屋根材は、ガルバリウム鋼板裏面に断熱材が付いた横暖ルーフS。
こちらの屋根は、寄棟で雨漏りし易い構造をしているため、工事内容が屋根寿命を左右します。
工事内容は、屋根材メーカーの工事規定を超える内容で、例えルーフィングが張られていなかったとしても雨漏りしない本体工事がなされています。
屋根工事の見積書を比べても意味がない理由
屋根業者が行う工事内容は見積書を見ても分かりません。
はじめに載せた見積書のように、いい加減な工事で高い金額を提示する業者もいますし、依頼を受けやすくするため逆に安い費用を提示してくる業者も多くいます。
通常、見積書には屋根の広さや使う役物の数量が記載されていますが、
●必要な役物をきちんと使った工事をするのか?
●役物を使うようには書かれていても実際に使うのか?
●どういった取り付け方をするのか?
●ただ取り付けるだけでなく雨水が入り込まないように、きちんと加工して取り付けているのか?
など、業者によって工事内容に雲泥の差があります。
例えば「壁際工事」と書かれていても、役物を使わずコーキングを塗るだけの内容と、役物を二重・三重に取り付ける仕様とでは金額に10倍の差があってもおかしい事ではありません。
工事内容が違うものを「壁際工事」と書かれた項目の単価で比べても何の意味もないのです。
今回の葺き替え工事ですが、
・カバー工法を葺き替えに変更。(コロニアルの撤去・廃棄、構造用合板の増し張り)
・断熱材無しガルバリウム鋼板から断熱材付きガルバリウム鋼板へのグレードアップ。
・メーカー施工仕様を遵守した役物使用と取り付け。
・雪止め追加、棟部二重雨仕舞、足場代などを追加しての工事合計費用は、1,300,000円でした。
ガルバリウム屋根は、価格(費用)が安いか?高いか? 工事内容が分からない状態で単純に比較するのは非常に危険です。
ガルバリウムは、お客様が想像する以上に工事後に雨漏りトラブルが多く起きている屋根材です。
依頼する場合は、工事内容に見合った金額であるかどうか?という視点で価格(費用)を比べるようにして下さい。